疾走する夜のハイウェイ
McCOY TYNER

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FLY WITH THE WIND
Milestone

CONTENTS
A:FLY WITH THE WIND,SALVADORE DE SAMBA
B:BEYOND THE SUN,YOU STEPPED OUT OF A DREAM,ROLEM

McCoy Tyner,Hubert Laws,
Billy Cobham,Ron Carter,& Orchestra


マッコイ・タイナーがストリングス・オーケストラを導入した「怪作」。

発売当時、賛否両論で、どちらかと言えば、こんなもんはジャズじゃないとの評が多かったようだが、あたしゃ好きだね (^^;
ジャズじゃないと言われればそうかなとも思うけど、別に何であっても心地よい音の流れ。
別に精神性やジャズ史での価値なんて考えませんが、ただ音に身をゆだねて快感なだけです。

この、フライ・ウィズ・ザ・ウィンドでは、大排気量のアメ車かなんかで、夜のハイウェイをひたすらぶっ飛ばして行くような イメージが、なんとも気持ちいいのだ。
自分の中では、ちょうどDon Cherryの「ブラウン・ライス」がサバンナを裸足でどこまでも走って行くイメージなのと、 好対照の音楽なのだ。

突進の前の安らぎ
JOHN COLTRANE

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COLTRANE
PRESTIGE

CONTENTS
A:BAKAI,VIOLETS FOR YOUR FURS,TIME WAS
B:STRAIGHT STREET,WHILE MY LADY SLEEPS,CHRONIC BLUES

John Coltrane,Red Garland,Paul Chambers,Al Heath,
Johnnie Splawn,Sahob Shihab,Mai Waldron,


コルトレーンのベストアルバムといえばいくらでもあるが、私の一番としては、SELFLESSNESSのマイ・フェイバリット・シングス を挙げたい。
ドルフィーとの競演でもそうだけど、ロイ・ヘインズのドラムが大好きなのよね。
(もちろん、エルビン・ジョーンズも好きだけど・・・)

バラードものでは猫杓(猫も杓子もご推薦)の「バラード」を今更出してもしょうがない?ので、 このRESTIGE時代の「コートにすみれを」Vioret for your fursをお薦めします。
突進し始める時代直前のトレーンの素直なやさしさが素直に心に沁みます。

フリーと民族音楽の融合(フュージョン)
DON CHERRY

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BROWN RICE
EMI

CONTENTS
A:Brown Rice , Malkauns
B:Chenrezic , Degi-Degi

Don Cherry,Charlie Haden,Billy Higgins,Frank Lowe,Ricky Cherry,
Bunchie Fox,Verna Gillis,Hakim Jamil,Moki,


ドン・チェリーといえばオーネット・コールマンとフリーをやっていた頃の評価はさほど高くないと思うが、 その後の一連の民族音楽に走った「オーガニック・ミュージック」の作品は好きだ。
これはドン・チェリーお得意のエスニックサウンドに、さらに電子楽器も含むフュージョン風サウンドを混ぜた感じの何とも言えない独特の世界。
いわゆるジャズとして聞くと面食らうだろう。
今どきではあの××教の音楽かと思う人が多いかもしれない。
アフリカかなんかの土の平原を裸足で走って行くようなサウンドが気持ち良い。

ジャケットもドン・チェリーの一連のデザイン。
コンサートの時の幕で、奥さんのモキさんが作っているらしい。
面白いから裏面も掲載しておきます。

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伝統と革新の佳作
ERIC DOLPHY

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FAR CRY!
PRESTIGE -1960-

CONTENTS
A:Bird’s Mother,Ode To Charlie Parker,Far Cry,
B:Miss Ann,Left Alone,Tenderly,It’s Magic,

Eric Dolphy,Booker Little,Jaki Byard,
Ron Carter,Roy Haynes,


ドルフィーと、ブッカー・リトルという2大プレイヤーの共演といえば、あの名盤「アット・ザ・5スポット」 だが、その前年録音のこのアルバムは、こじんまりとした印象ながら伝統を踏まえた革新というドルフィーの本質を フルに開花させる予兆を見せる佳作だと思う。
私の好きな、Ron CarterとRoy Haynesがバックをとっているのも良いのだ。
Miss Annのスタンダードかつ複雑なテーマから二人の掛け合いにもつれこんで行くところなんか最高だ。
Tenderlyのバスクラ・ソロもドルフィーらしいし、It’s Magicの抒情的なプレイも良い。

ドルフィーのアルバムの中でも一番何回もよく聴いた一枚である。

オーソドックスと不条理
ERIC DOLPHY

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THE QUEST
ERIC DOLPHY
PRESTIGE -1960-


CONTENTS
A:Status Seeking,Duquility,Thirteen,We Diddit
B:Warm Canto,Warp and Woof,Fire Waltz

Eric Dolphy,Booker Ervin,Mal Waldron,
Ron Carter,Joe Benjamin,Charlie Persip,



マイ・フェイバリイト・アーティスト、エリック・ドルフィーの中でもさほど有名な盤ではないけれど、 一番好きなアルバムのひとつである。
ロン・カーターのアルコ奏法を多用した独特の一種不気味な雰囲気の中での、オーソドックスに根ざした「ドルフィー節」は、 何だか日常の中に何食わぬ顔で潜む狂気のようなものを感じさせるものが有る気がする。
もちろんそれは、ドルフィーの作品全般に言えることだし、その極北となるのはあの「Out to Lunch」なのだが、 このThe Questではもっと取り付きやすい曲が多いので、さほど体力・気力が無くても気軽に聞けるのが良い。
名曲、Fire Waltzも入ってるし、Warm Cantoでは素直に泣ける。

ところで、このPRESTIGE盤ジャケットのサイケ調デザインは原盤の元デザインなのだろうか。

爽やかな寂しさ
David Friedman

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David Friedman
WINTER LOVE,APRIL JOY
EASTWIND -1975-


CONTENTS
A:NYACK,TRUCE,BRITE PIECE,EXCERCISE#5-APRIL JOY
B:UNTITLED,ISLAND,SARABAND,I’VE TOUCHED YOUR SOUL

David Friedman,David Samuels,Hubert Laws,Harvie Swartz


「いわゆる」ジャズかと言われるとちょっと違う気もするが、ジャズのジャンルには違いない。
日本のジャズレーベル、イーストウィンドのレコード。
ちょっとECM的な北欧系サウンドで、今で言えば環境音楽とかヒーリング系の感じだが昔すごくよく聴いた一枚。
静まり返った深夜に音量を絞って聴くとその寂しさに落ち着くという不思議な世界。
バッハの曲も入っているくらいで大体が癒し系の音作りだが、 ヴィブラフォン、マリンバ、ベース、フルートという冷たさと暖かさが混じった音質で何とも「爽やかに」寂しさを味わえる音楽である。

「寂しさ」とは現代の消費社会の皮相部分では忌むべき価値観かもしれないが、「モノノアハレ」の日本的情緒の世界では美的感覚のひとつの極致になり得るのだ。
そんな日本人にはきっと受け入れられるであろう日本向けアルバム。