フジレイジンソウ

フジレイジンソウ (キンポウゲ科トリカブト属)【富士伶人草】
Aconitum x fudjisanense

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山

「アズマレイジンソウ」と「レイジンソウ」の中間的形質をもち、関東や中部に分布すると思われる種間交雑種。

雑種起源なだけに、見分けのポイントとなる形質はおそらく不安定でブレ幅があると思われます。

大まかな外見で判別することは難しく、花茎や萼片の毛を確認する必要があります。

すなわち、概ね花茎の毛は屈毛、頂萼片の毛は開出毛、というのが大体の識別点かと思われます。

実際に図鑑や資料によって説明が違う場合があり、WEB上のブログなども怪しい記述も多いです。

そもそも、過去と現在では知見が変わってきているようです。

東京都:絶滅危惧ⅠA類(CR)

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山

フジレイジンソウ

2022/10/03 陣馬山

フジレイジンソウ

2022/10/03 陣馬山

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山

フジレイジンソウ

頂萼片に開出毛、花茎には屈毛が生える  2022/09/26 高尾山

フジレイジンソウ

2022/09/26 高尾山


【長文注意】この先は「フジレイジンソウ」「アズマレイジンソウ」「レイジンソウ」の識別についての考察を記載しています。


まず「アスマレイジンソウ」と「レイジンソウ」の区別点としては、花茎と上萼片に生える毛が重要なようです。

これはいろいろな資料でも当然ながらほぼ共通していて、ざっくり言うと、

「レイジンソウ」 →花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生える
「アズマレイジンソウ」 →花柄と上萼片に屈毛が生える

ということに尽きるようです。

「フジレイジンソウ」はマイナーなため載っている図鑑も少なく、手元の資料及びWEBでのエビデンスでは、

広い地域に分布するレイジンソウと比べて、茎に稜があること、がく片の外面に直毛があることなどの特徴がある。
(高尾山の花と木の図鑑/主婦の友社)

花は淡紅紫色、頂がく片は上部ほど細くなる、花柄に曲毛あり → アズマレイジンソウ
  レイジンソウとアズマレイジンソウの雑種で開出毛と屈毛が混じる → フジレイジンソウ
([改訂新版]図説植物検索ハンドブック【埼玉2998種類】 / さきたま出版会)

茎に稜があり、萼片の外面に直毛がある型はフジレイジンソウ A.fudjisanense とする見解がある。
ただし、アズマレイジンソウには、茎の稜の発達の程度、萼片外面の毛に変異があり、明確な識別点を認識できないため、アズマレイジンソウの一型とみなす。
(神奈川県植物誌2018 / 神奈川県植物誌調査会)

萼片の外面や花柄、花序の中軸に開出毛がある。レイジンソウと比べて、茎に稜があること、萼片の外面に直毛があることなどで区別される。
アズマレイジンソウとは区別しない考え方もあり、再検討が必要である。
(東京都 レッドデータブック)

という感じでした。

また、「アズマレイジンソウ」「レイジンソウ」の分布域としては、

レイジンソウ:本州(関東地方以西)~九州の暖帯上部~温帯に分布する。
アズマレイジンソウ:本州中北部の主として日本海側に分布する。
フジレイジンソウ:記載無し
(日本の野生植物/平凡社 1983年 初版第9刷)

レイジンソウ:分布 四・九
アズマレイジンソウ;分布 本(東北地方、中部地方、関東地方)
フジレイジンソウ:記載無し
(山に咲く花 増補改訂新版 / 山と溪谷社 2013年)

ということで、「レイジンソウ」の分布は昔は関東以西と考えられていたのが、最近では四国と九州となってきています。

多くの普及版図鑑の出典元となっていて、実質上日本の植物図鑑のバイブル的な「日本の野生植物/平凡社」は古書店で特価で買った古い(1983年)ものしか持っていません。
これには「フジレイジンソウ」は載っていないので、図書館に出かけ最新版のものを確認して見ました。
そうすると2015年の改訂新版には「フジレイジンソウ」の記載がありました。

花茎と上萼片の基部に、屈毛だけでなく、開出毛、さらに腺毛がまばらに生えるものがあり、これをフジレイジンソウ Aconitum x fudjisanense Nakai という。
本州各地で<レイジンソウ>とよばれているものはこれに当たる。フジレイジンソウはアズマレイジンソウとレイジンソウとの自然交雑の結果生まれたものと推定されている。
(改訂新版 日本の野生植物/平凡社 2015年)

これを見ると、屈毛、開出毛、腺毛が混在する感じに見えます。
ただ、WEB上に存在するブログなどの観察記録など見ると、ほぼ高尾山のものばかりがあり、その場合共通するのは花茎の屈毛、上萼片の開出毛という点です。

「アズマレイジンソウ」と「レイジンソウ」の中間的形質をもつ種間交雑種起源ということなので、見分けのポイントとなる形質もおそらく不安定でブレ幅があると思われます。
従って高尾山自生のものはこのような形質であり、他のところではおそらく花茎の開出毛や腺毛などといった形質が混ざるバリエーションがあるのかもしれません。

分布域についても、改訂新版では、

レイジンソウ:四国・九州に分布するが少ない。
アズマレイジンソウ:本州(東北地方~近畿地方の太平洋側山地)に分布する。
フジレイジンソウ:→本州各地
(改訂新版 日本の野生植物/平凡社 2015年)

と、「レイジンソウ」は四国九州にしか無い記述となっています。
逆に「アズマレジンソウ」が近畿にまで拡大していて「フジレイジンソウ」がその中に混在している感じに見えます。

おそらくですが、過去には本州西部で「レインジンソウ」と認識されていたものが近年「フジレイジンソウ」のバリエーションとして見直されてきたのではないでしょうか。

この「改訂新版 日本の野生植物」を元に考えるなら、関東近辺で見るレイジンソウ類は「アズマレイジンソウ」か「フジレイジンソウ」かのどちらかであり、見分けはやはり花茎と上萼片の毛の状態ということのようです。
ただし、前出の「神奈川県植物誌2018」「東京都レッドデータブック」などのように、両者を区別しないという見解もあるので、もしその場合には、本州のものは「アズマレイジンソウ」、四国・九州では「レイジンソウ」という、ごく大雑把な区別となります。

面倒なので個人的にはそれでいいような気もします(^^)

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