冬山登山向けのモデルを筆頭に、羽毛シュラフは高級モデルの代表となっている。 しかし、これほど化学繊維が発展・進化してきている時代になぜ、いまだに羽毛なのだろう? それはいまだに、単位重量当たりの保温性が羽毛を超えたものが出て来ないからである。 確かにある特殊な条件を与えれば、羽毛を超えた化学繊維もできているす。 例えば、一時かなり話題を集めたシンサレートなどは、数ミリから1センチ程度までの厚さであれば 羽毛の2倍近くもの断熱性を持つとされている。 しかし、厚さ数ミリの羽毛シュラフなど実際には考えられない。 つまり,比較になる絶対的なロフトが違うのである。 ただし、水でずぶ濡れになってしまった時には羽毛はぺったりとつぶれてしまうが、 化学繊維ならロフトをほとんど保っていられるし、乾きが早いのもたしかだ。 だからカヌーツアーなど、濡れてしまうのが前提のような使い道には、化学繊維の方が適しているといわれるのだ。 しかしながら、乾燥時・寒冷下の絶対的な保温性はやはり羽毛が一番で、 同じ保温性を持たせるために良質の羽毛なら化学繊維の約70%程の量で間に合うとされている。 また多少濡れた程度では、羽毛のもつ湿潤熱効果で化繊よりも温かい。 また、長期保存下では羽毛の方が長期にわたってロフトを保つことができる。 化学繊維が5年で次第に「せんべい布団」になってくるとすれば、 羽毛は保管が良ければ10年たってもほとんど変わりないふくらみを持ち続ける。 羽毛の中にはダウンとフェザーがあり、一般にダウンの率が多いほど良いとされているが、 ダウンそのものにもグレードがあるので、単にダウン混率が高いから良質とは限らない。 良い羽毛にはパワーがあり,これは常に膨らもうとする力である。 カタログデータ的には「フィルパワー」で表わされ、これは1オンスの羽毛が何立方インチの体積に膨らむかを表わし、 550以上あれば高級羽毛とされている。 さて,良質の羽毛をシュラフとして充分に生かすためには、適確な縫製が必要になる。 羽毛の質や量だけでなく、縫製の方法も要チェックというわけである。 サマー用やスリーシーズン用など薄くてローコストのものは、シングルキルトと呼ばれる一番単純な縫製になっている。 これだと縫目から冷気が通過するし厚みが出せないので、スリーシーズン以上のものにはボックスキルト又はダブルキルト、 Vチューブキルトなどの立体構造が採用されているものが多い。 RETURN
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