革靴の手入れ


 良質の革の登山靴は、手入れがよければ驚くほど長く使えるものである。
靴の皮革はいわば生き物であり、適正な油分を保っていれば長く生き続けるし、逆に油分が抜け、 乾ききったときに革はその命を失ってしまう。

 革靴の手入れは、油分のバランスを保つことが一番重要なポイントだ。
靴に塗る油の成分は大きく分けて、革に栄養を与えしなやかさを保つ保革オイルと、
表面に防水保護皮膜を作るワックスとに分けられる。
 ミンクオイルに代表される保革オイルは、革に栄養を与えしなやかさを保ってくれるのだが、 革をやわらかくするので塗り過ぎは型くずれの原因となることもある。
特に、適当な堅さを必要とする登山靴やテレマークブーツなどには塗り過ぎに注意が必要だ。
 逆に防水ワックスは浸透性が少ないので、 これのみを塗り続けると革本来のしなやかさがしだいに失われてしまうこともある。
また、表面だけに防水するので岩などに擦れてワックス皮膜がはげてしまった時は革の中に水を吸ってしまう。
両者のバランスが肝心なところである。

 油がのった、良い状態の靴は、多少の泥汚れなどは乾かしてから固めのブラシで磨くだけできれいになってしまうものだ が、もしひどく泥まみれになってしまったときは、泥が乾いてしまわないうちにざっと水洗いしてしまおう。
ただし、そのときは中に水を入れないよう注意。

 雨などで、芯までぬれてしまった靴は新聞紙などをつめて 乾かすことも多いのだが、この場合、かなり頻繁に新聞紙を交換したほうがいい。
うっかりと入れっぱなしにしておくとかびだらけになってしまうことがあるからだ。

 濡れた靴を早く乾かしたいのはやまやまなのだが、ストーブやドライヤーなどの高熱を加えるのはあまりに乱暴である。
革の寿命を一気に縮めてしまうこと間違いなし。時にはソールの剥がれの原因になることもある。

 ぬれた靴は乾かしてからオイルを塗るのだが、完全に乾き切ってしまう一歩直前に塗るのがコツ。
足首回りやベロなどの内張が革の場合、ここにも保革油をごく薄く塗ってやろう。
また、縫目には油を塗ってはいけないと昔からよく言われるが、これはアマニ油などの液状オイルを頻繁に塗った場合に、 底コバの出し縫いの糸が伸びて緩んでしまうのを恐れてのこと。
防水ワックスについては全く心配なく、むしろ、糸が乾燥しきってしまうことの方が問題である。
もちろん、専用のシール剤で塗りかためてしまってもよいだろう。

すり減ったソールの交換は、極端に減らないうちにしてしまった方が良い。
歩き方に癖のある人は、片減りすることが多いので特に注意。
ミッドソールまで減りが食い込まないうちに交換すべきであろう。

 良い革靴は、履き込むほどに足になじんで履き易くなってくるものだから、 しっかり手入れして体の一部になるまで永く愛用したいものである。


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