ヒールフリースキー入門


 「ヒールフリースキー」とは、スキーをやっている人でもあまり聞き慣れない言葉だろう。
いわゆる、クロスカントリー、テレマークなど、「アルペンスキー」に対して「ノルディック系」の スキーは靴のかかとが固定されていないのでこのように呼ばれている。

 19世紀初頭に北欧で始まった近代スキーは、それから最近までいわば殆どヒールフリーだったわけである。
現代になってあらゆるスキー場に機械力が導入され、歩く機能が必要なくなったアルペンスキーは、 滑り降りるための性能と安全性を徹底的に追求し、今や殆ど完成された代わりに、 歩くことも走ることも登ることもできないスキーになってしまった。

 言うなれば、「ヒールフリースキー」とは、現代のテクノロジーで洗練されつくしたアルペンスキーに比べて 極めて「原始的な」形態のスキー用具を使うことによって、より自由に軽快に雪のフィールドを遊びたい!という、 ちょっと大袈裟にいえば現代の管理社会に対するアンチテーゼの意味がちょっぴり込められた感覚である。

 クロカン、テレマークといってもその遊びかたは幅広く、オリンピックなどで見るようなトップレーサーの世界から、 ファミリーでのんびり楽しむスノーハイク、ロッキーやアルプス、ヒマラヤなどでも挑戦されている エクストリームスキーの世界までさまざまである。

 山歩きやハイキングをしている人は、スノーハイク、バックカントリーといわれるライトツーリングの方面が始めやすい。
滑る道具ではなく、歩く道具としてとらえれば、いつもハイキングに出掛けるのと同じ感覚で始められる。
 去年あたりから、「ネイチャースキー」ということも提唱されてきている。
要するにクロカンスキーの技術だなんだと難しく考えず、とにかく取り回しの楽な歩きやすい道具で、 冬の森に分け入って静かな自然を知り、味わおうというものである。
 ファミリーは勿論、中高年の愛好者も増えている。

 また、アルペンのゲレンデスキーをやってきて、最近ちょっと飽きぎみという人なら、 ダウンヒルタイプのテレマークをゲレンデから始めてみては。
新しいことをやってみたいけど、スノーボードはちょっとなあ・・・という人にもお薦め。
また初心者のころの感覚を再び味わえるかも (^^;

 おいおい、かかとが止まってない板で滑れるのかと思う人もいるかも知れないが、 傾斜のゆるいフラットな斜面なら誰でも滑れる。(あたりまえか)
だが傾斜がきつかったり、雪面が悪かったり、スピードが出たりすると当然不安定になり、 ちょっとしたきっかけで簡単に転んでしまう。
そこで、かかとが止まっていない不安定さをフォローするため足を前後に開いて重心を落とし、 いわゆる「テレマーク」姿勢をとるわけである。

 そう聞くとなんだか不様な様子を思い浮かべるかもしれないが、上手い人のテレマークの滑りは、 まるで雪上をスキップしてくるように軽快で優雅なものである。

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Nekosennin (C) 1997