死に山:世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

死に山:世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相
(ドニー・アイカー著、安原和見訳、河出書房新社)

1959年2月、ソ連のウラル山脈の雪山で男女9人の若者が全員死亡する遭難事件が起きた。

捜索隊が発見した遭難の状況があまりに不可解だったのと、当時の冷戦下のソビエトの体制もあり事件は闇の中となった。

そしてソ連が崩壊し、インターネット時代となってから、この事件は再度脚光を浴びることとなる。

過去の不可解な事件で情報が少ないこともあり、雪崩説から始まって野生動物や現地人による襲撃とか、果てはUFO犯人説や軍事機密による隠蔽説まで飛び交った。

この事件を知り、大いに興味を持った著者はロシア現地に赴き、今も残る関係者の証言や資料を丹念に追跡し、ついに自然現象から謎を解明する新説を打ち出す。

本のタイトルからして「トンデモ本」の類かと思ってしまうが、実際には逆で、むしろ懐疑主義的というか常識的な解釈を淡々と積み上げていく感じ。

そして達した最終説明は、自分としては完全に納得できない部分もあるが、なかなか良く考えられているとは思う。

当時のソ連の学生生活の実際や、地方への旅行風俗などにも興味深く触れることができる、たいへん良質なドキュメンタリー作品。

*ディアトロフ峠事件(Wikipedia)