ハラン

ハラン (キジカクシ科ハラン属)【葉蘭】
(学名: Aspidistra elatior

2018/08 神代植物公園

観葉植物として、また庭園や公園の植栽によく使われているので知らず知らず眼にしているものの、普段別に気に留めないような植物です。

大きな常緑の葉が植栽の区切りやポイントに使いやすいのでしょうが、興味がなければそれ以上のことは無いと思います。

ところが、よく調べてみると、いろいろ興味深いことが分かってきます。


そもそも、これは江戸時代から観葉植物として広く栽培されていましたが、昔、中国から園芸用に持ち込まれたものというのが定説で、実際に中国でも昔から観葉植物として栽培されていました。

しかし、実際には日本で普及しているものと同種の自生は中国には無いことが解りました。

その後、調査の結果、現在同種が自生している土地は、鹿児島県トカラ列島の諏訪瀬島、宇治群島の宇治向島、三島列島の黒島の3つの島でのみ発見されています。

このような辺境の離島にしか無いものが、どうやって江戸以前に広く普及してきたのか、ちょっと理解不能です。

ハランの古名は馬蘭(バラン)であり、これはあのお寿司に飾りや区切りに差し込まれている「バラン」そのものです。

「バラン」はクマザサを使う場合もありますが、本式には「ハラン」の葉が使われます。

しかし、中国では料理の飾りに笹の葉を使うことはあっても、「ハラン」を使う風習は全く無いそうです。

そういったことも含めてみると、この離島の希少植物が中国と日本に普及し日本の食文化にも関わるようになった経緯は、単に植物の話でなく何か文化人類学的なアプローチが必要なのかもしれません。


ハランの花は春に地下茎から地面に顔だけ出した形で咲きます。

「ズズラン亜科」なのに鈴蘭とは似ても似つかない、むしろ「カンアオイ」などに似た地面に咲く肉質の地味な花です。

この花も花粉を受粉して実がなるのですが、花粉の媒介者が何者であるのか長らく確定していませんでした。

ナメクジやアリ、トビムシなどが推測されていましたが、どうやら「キノコバエ」の仲間が媒介者であるようです。

この辺の経緯も全くの別植物である「カンアオイ」の花の媒介者と同じで、花の形式と媒介者との共進化の成り行きに興味深いものがあります。

ハラン

ハランの蕾  2019/03 明治薬科大野草園


鹿児島県絶滅危惧II類