キタミソウ

キタミソウ (APG:オオバコ科キタミソウ属)(ゴマノハグサ科)【北見草】
(学名:Limosella aquatica)

2017/12 行田市

川岸の泥の上に点々とロゼット状に生える細長い葉のわきに、とんでもなく小さな星型の白い花。

せいぜい2mm程度しかない花は、眼が慣れないと見つけられず、知らずに踏み潰して歩き回ったりしてしまいます。

しゃがみこんで顔を地面に近づけ、眼が慣れてくるとあちこち、そこいら中にたくさん咲いていました。

1属1種の変わった花で、草姿は赤っぽいものはちょっと「モウセンゴケ」に似た印象です。

花は白色ですが、ピンクがかっているものもあります。

長い筒状の萼の先に5弁に分かれた筒状の合弁花が顔を出しているかたちで、正面から見ると星型の5弁花に見えます。

変則の弁数も混ざっていて、4弁から6弁のものもあります。

黒い葯の雄しべは5本ではなく4本です。

花の幅は1.5mmから2mm程度で、閉鎖花も多いようですがこんな小さな花を誰が受粉させるのでしょうか?

糸状の赤い葉のものは生えたてのものでしょうか。大きな株は緑で長細いヘラ型の葉です。

丸い実をつけているものもいくつか見られます。

とても小さな草なので、訪れた群生地は知らず知らず踏み荒らしてしまうような場所です。

足の踏み場に気をつけながらしゃがんで長時間観察していると、腰が固まって立てなくなりました(笑)。


カムチャツカ、シベリアから北欧にかけて、北極圏に近いツンドラ地帯に広く分布する小さな草で、北海道の北見で1901年に発見されたことからこの名前がつけられました。

現在では北見市では確認できず絶滅とみられていますが、北海道では湧洞沼や釧路周辺などで見られるようです。

ところが、奇妙なことにこのツンドラの植物が、行田市や岩槻市、草加市、越谷市など埼玉県の各地に点々と隔離分布していることです。

さらには、遠く熊本県の水前寺江津湖に自生しています。

国のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類とされているたいへん希少な植物なのですが、深山幽谷や手つかずの湿原などでなく、住宅も多い田園地帯の農業用水だけにあるとはいったいどういうことなのでしょう。

隔離分布については、どうやらカモ類などの渡り鳥が北方ツンドラ地帯から種子をもってくるのではないかといわれています。

しかし、それだけなら、東北地方や北陸地方などにも沢山分布してもよさそうなものです。


「日本の野生植物」によると、この花の花期は6-10月と夏の花になっていますが、埼玉の自生地では11月-3月と冬に咲きます。

しかも奇妙なことに、埼玉での自生地はどこも荒川水系の支流的な農業用水や堰の河川敷など、人工的な環境のところばかりです。

埼玉県内の自生地で共通していることは、自生場所の川が季節によって人為的に水量操作されており、夏場には水没している場所で、秋から春まで水を落として減水しているということです。

つまり、この場所のキタミソウは夏場は水底で種のまま休眠していて、秋に陸地となった地面で発芽し育って花をつけ実を生らし種子を作るというわけです。

元々がツンドラの北方植物ですから、真冬といっても関東平野の日だまりなど快適な陽気なのでしょう。

この植物は農薬や汚染には弱いようなので、水質などの環境は保たれていて、泥の水底をもち流れも激しくなく、夏の暑い時期には水中に没し涼しい時期には陸上になるという水辺で、鴨が渡ってくるという条件のところだけに自生できるということのようです。

こんな特殊な条件を満たす場所は、なかなかあるようで無いから絶滅危惧の希少種なのでしょうね。


しかし、考えてみるとこの植物は希少な絶滅危惧種とはいえ、水鳥かなにかによって北方から持ち込まれたいわば「帰化植物」と思われます。

堰などによって川や水田の水量管理がされているのが前提とするなら、果たして近世以前には自生はあったのでしょうか。

例えば北海道や東北などに広く一般に自生していて、たまたま関東に隔離分布しているという場合とは話が違うように思われます。

「シャガ」や「ヒガンバナ」などのような史前帰化種というわけでもないような感じであり、人が持ち込んだ訳ではないにしても実は全くの帰化植物なのではないかという気がします。

きわめて特殊な環境の組み合わせという奇跡によって自生している「奇跡の花」ゆえの絶滅危惧種ということなのでしょうか。


2017/12 行田市

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実らしきものが生っています  2017/12 行田市

2017/12 行田市

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2017/12 行田市

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2017/12 行田市

2017/12 行田市

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1円玉との大きさ比較  2017/12 行田市

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若い株の群生  2017/12 行田市

生育環境 2017/12 行田市