呪師に成る/イスクトランへの旅  カルロス・カスタネダ 真崎義博訳
二見書房  昭和49年
呪術師ドン・ファンシリーズ第3弾。
カスタネダはさらに「知者」への道を歩み続ける。
前著の「見る」ことは、幻覚性植物を使いこなすテクニックではなく、世界を認知するチャンネルを切り替え、意味のシステムをいったん破壊して再構築しなければならない。

そのような修練を重ねる中で、さらにいろいろなテクニックが登場してくる。
「履歴を消す」「しないこと」「力の輪」、そして「世界を止める」。
このへんまでくると、呪術師との会話も次第に哲学論の様相さえ帯びてくるのだが、同時に最初にあった民俗学研究はどこか吹っ飛んでしまっている。
要は著者が観察者から実践者へ変容してゆく過程なのである。

ただし、実践者としての著者の道は、ここからようやく始まったところであり、「イクストランへの旅」はこれから始まるのであった。
関連文献

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呪術と夢見/イーグルの贈り物
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